幸福の木381鬼胎3

和也

どんな急ぎの用事かと思ったら

俺は渡された決済ファイルを兄貴に返した。

どういうことだ?

彼は警備の経験は皆無じゃないか。

そうだよ。でも、武術は一通り収めていて大したものでしょ?

何、のんきな。

のんきって?

じゃないんだったら智くんに付けたって意味がないだろ?

正式に属してないけど、個人的に信頼できる人を雇ったんだ。

彼は櫻井の社員になってもらってる。

はっ?

スットンキョンな返事

当然か、兄貴に全く知らせてなかったからな。

俺に全部任せるって言ったよね。

でも、だからって。

どこの誰とも分からない人間をさと兄の側にはつけられないでしょ。

錦戸は俺の後輩なんだ。

誠実だし、身元も確かだし、将来的には共同生活をしてもらうかもしれないから、いい加減な人間には任せられない。

きょっ、共同生活っ!

バカなっ、何考えてんだっ。

思った通りの反応

まあ、そう来なくっちゃね。

俺は本気だよ。

さと兄がどうしてもマンションが良いって言ったら反対できないでしょ?

お前、あんなに許さないって言ってたじゃないかっ。

そうだけど

だからって無理矢理従わせるわけにはいかないでしょ?

そっ、それは。

あら

シュンとなって黙る。

強制は出来ないって分かっているんだ。

ちょうど、マンションの隣りが空いたから抑えてもらったんだ。

大掛かりだけど、許可がおりたらつなげようと思ってる。

つなげる?

広くして裏で部屋を繋げるんだよ。

まあ、二世帯住宅仕様だね。

そんなことダメだっ!

なんでよ?

誰かに侵入されたら守れないじゃん。

そっ。そうだけど。

今までは一人じゃなかったけどこれからは違うから、そのつもりで準備しないとね。

さと兄のためだよ。

信じられない事だが俺の言い分に渋納得したようだ。

言い返す言葉が見つからないのか兄貴は黙ったままだった。

嘘だろ?

あんなセキュリティーの整った部屋の壁を壊すわけないだろ。

だが、兄貴は黙って真剣に考え込んでいた。

おれ仕事にもどっていいかな?

えっ、あそうか

急に呼び出して悪かったな。

忙しいのは本当だ。

俺は社長室を後にした。

彼に仕事を頼むのはまだ後日だって言い忘れたけど

まあ、いいよな。

ついでにちょっと休憩しよ。

俺はゆっくリと仕事場に戻ることにした。

こんなイケメンと同居?

和也は随分と信頼してるみたいだったけど、よくよく見たら何だかスケベそうじゃないか?

真面目そうな表情をして見せてるけど

智くんの側にいたら豹変するんじゃないか?

体だって智くんより大きいみたいだし。

あの人と一緒にいて平静でいられる?

家のなかだとリラックスして隙だらけどころじゃない。

あんなことや

こんなことや

ダンッ!

絶対に危ないじゃないかっ。

ダメだ。

和也と話し合わないと

どうかなさいましたか?

え?

机を叩いて立ち上がった姿だった。

いや。

あわてて座って見せた。

俺には智くんに何か意見する権利なんてないけど、でも、これは違う。

大体同居ってどういう意味だ?

マンションで一緒に暮らすって事か?

ガタッ

社長?

絶対にダメだっ!

村沖が何かを尋ねていたが頭に全く入らなかった。

一室がお祝いの品で埋まっていた。

返す作業が大変だろう。

キッチリと名前と住所を書かされたから、新しい秘書はかなり優秀なんだと分かった。

国分さんっ。

若い女性の声がする。

振り返ると、はっきりとした顔をした女性が私の側にあわてて駆け寄ってきた。

国分太一さんのお母様ですよね?

ええ。

お世話になっております。

わざわざお越しいただいてありがとうございました。

翔さんはお忙しいようね?

あいえ、その。

だが、聡明そうな秘書の女性は言いにくそうに口ごもってしまった。

どうかしたのかしら?

もし、お時間がおありの様でしたら少し付き合ってくださいませんか?

私に?

だが、真剣な様子の彼女に興味が湧いたのと、時間があった私は彼女の求めに応じる事にした。

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